「はい、1日寝たらすっきりしました」
というわけで、いつも通りに思ってもいないことを口に出す。
本当は、全然すっきりなんてしていないけれど、目の前の人がこうでも言わないと引き下がってくれないというのを既にこれでもかというくらい思い知らされているので、自分なりの精一杯の元気のある声で言ってみた。
けれど、正直ただの無理している人間にしか見えないだろう。
だが、由吉さんには、こんなわたしの態度でも通用するらしく、「よかった! それじゃ下で待ってるよ!」と、昨日とほぼ同じやり取りをしてわたしの部屋から出て行ってしまった。
もしかしたら、隣の部屋から憂ちゃんが出てくるまえに退散したかったのかもしれないけれど。まぁ、理由はなんであれ、とにかく一人になれた。
正直にいえば、まだ少し頭痛がする。
ついさっきまで何だか嫌な夢をみていたような気がするのだが、上手く思い出せない。
それとも、わたしが思い出したくないだけなのか……。
いや、もう気にするのはやめようと、わたしは部屋のクローゼットから、まだ着なれていない制服を取り出して、上のパジャマを脱いだときだった。
「あっ、そうだ! 愛美ちゃん! 今日は久瑠実さんが昨日のうちに作ってくれたプリンがあるんだよ! 早くみんなで食べ……」
勢いよく扉を開けた由吉さんと対面する、下着姿のわたし。
うん、もうこの展開も慣れてきちゃった。
「ごっ、ごめん!」
そう言って、バタンと扉を閉めた由吉さんだったけど、わたしの部屋から慌てて出て行くところを憂ちゃんにバッチリ見られてしまっていたらしい。
結局、わたしがリビングに着いたころには、朝から久瑠実さんの前で正座をさせられている可哀そうな由吉さんの姿を見るはめになってしまった。