気が付けば、わたしは皿に盛られていたカレーを、食べ終えてしまっていた。


 おかわりする気にはとてもなれない。

 わたしは、早くこの場所から離れたかった。

 こんな家族が楽しそうに過ごす時間を一緒に共有することなんて、わたしには耐えられない。


 わたしは、小さな声で「ごちそうさま」と呟いて席を立った。

「愛美ちゃん、大丈夫? 何だか疲れているみたいよ?」

 そうわたしに問いかけたのは、久瑠実さんだ。

 おっとりしていて、久留実さんは鋭いところがある。

「いえ……。学校でも初めてのことばかりだったので疲れちゃって……少し部屋で休んできます」

「……愛美ちゃん。あまり無理をしちゃいけないよ。今日はただでさえ憂のわがままに付き合ってくれたんだ。大変だっただろ?」

 蓮さんまで心配そうな声色でわたしを気遣ってくれたが、「ちょっと蓮お兄ちゃん。それってあたしが悪者みたいじゃない!」と、憂ちゃんに噛みつかれてしまったので、すぐにわたしから意識を外してくれた。

 由吉さんもなにか言いたそうにしていたけれど、

「うん、わかった。それじゃ、ゆっくりしておいで。お風呂が湧いたら呼びに行くから」

 と、わたしに告げるだけだった。