そう、わたしには面倒なのだ。

 誰かから感謝されることなんて、面倒くさいし、わたしには必要ない。


「わっ、私! 倉敷(くらしき)智子(ともこ)って言います! 遠野さん、今日は本当にありがとう!」

 しかし、女子生徒は、わたしの話はあまり耳に入っていないようだった。


 ――本当に、こういうのが迷惑なんだ。


 わたしは、これ以上この場所にいるのが嫌になって、無理やり憂ちゃんの手を引いて「行こう」と呟いた。

「いいの?」と、憂ちゃんは少し心配そうな顔をしたけれど、わたしはそれに気が付かない振りをして、その場を立ち去った。