「あの、本当にありがとうございました!」
憂ちゃんとともに近江家へ帰ろうとすると、女子生徒が声を掛けてきた。
「えっと、転校生の、遠野さん、だよね?」
……やっぱりこっちの素性は知られていたか。
まぁ、転校生なんて目立つ存在であるわたしが、同じクラスの人たちに気付かれないわけがない。
わたしも相手がクラスメイトだと気づいたのだ。
その逆もさもありなん、である。
なので、わたしは、そのあとに言われるであろう彼女の告白を遮って、言い放つ。
「べつに、気にしなくていいし、感謝するなんて絶対にやめてね。わたしはただ単に、自分が腹を立てて首突っ込んだだけだから」
別に、初めからこの子を助けようなんて思っていなかったし、憂ちゃんが気付いていなければ、我関せずの態度を貫き通して、さっさと店から出て行くつもりだった。
だから本当に、感謝されるのだけは、まっぴらごめんだ。
「助けて貰ったって思うなら、この子に感謝して。あなたの騒動を見て、最初に動いたのは、この子だから」
わたしはそう言って、隣にいた憂ちゃんの頭をポンポンと叩いた。
わたしを余計なことに巻き込んだのだのだから、面倒な役割は全部憂ちゃんに押し付けよう。