「ねぇ、店員さん。追いかけなくていいの?」

「……あっ、ちょ、ちょっと待ちなさい! あなたたち!」

 そんなわたしの指摘に我に返ったのか、店員さんも店から飛び出していった。

 その際に、店員さんが取り上げていた彼女の鞄も乱暴に通路に落とされてしまって、中の教科書が散乱する。

 わたしは無意識に、その教科書を拾い集める。

「はい、コレ。面倒なことに巻き込まれたね」

 お互いさまにね、という言葉は言わずに、わたしは彼女に鞄と拾った教科書を渡した。

「あっ、ありがとう……」

 まだ状況を理解していないのか、その女子生徒はオドオドしながら、わたしから教科書を受け取った。

「すっ、凄いよ愛美お姉ちゃん!」

 一方、憂ちゃんは目をキラキラさせながら、わたしを見ていた。

 どうやらこの子の中で、またひとつ、意図せずに好感度があがってしまったらしい。

 勘弁してよ、全く。

 わたしがため息をついたところで、他の店員さんがやって来て(遅いよ)わたしたちは事の顛末を話すことになった。