「別に、鞄から商品が出て来たからって、その子が盗んだって限らないんじゃないですか?」
わたしがそう言うと、明らかに店員さんは怪訝そうな顔をした。
「愛美お姉ちゃん、それって、どういうこと?」
一方、憂ちゃんは不思議そうな顔でわたしを見る。
あーあ、面倒くさいなぁ、と思いつつ、わたしは店員さんに質問した。
「あの、この子が万引きしているところ、ちゃんと見たんですか?」
やや乱暴な口調になっているのは、やっぱりわたし自身も店員さんの態度に腹を立ててしまっているからなのかもしれない。
すると、わたしの質問に対して、店員さんは少しだけ怖気づいたような態度で言った。
「それは……、見ていないけれど、でも、実際にこうして商品が出ているんだから、見てたかどうかなんて関係ないでしょ?」
確かに、店員さんの証言は尤もだったけれど、わたしは、その言葉を聞いて、自分の考えに確信を得た。
「それじゃあ、やっぱり直接見たというわけじゃないんですね?」
「だから、それが何だっていうのよ」
やれやれ、といわんばかりの態度をとって、わたしは、あることを店員さんに問いただした。
「それならどうして、この子が万引きしているなんて、わかったんですか?」
「それは……」
わたしの指摘に、店員さんが表情を引きつらせる。
その反応をみて、わたしの考えが確信に変わった。
「犯行現場を見ていないのに、お客であるこの子の鞄の中をチェックするなんて、余程のことがない限りありえないですよね?」
少しだけ店員さんを追い詰めるような物言いになってしまっているけれど、それくらいは許してほしい。
このお店では、商品に防犯用ブザーがついていることもないので、犯行現場を直接見られない限り、身体検査なんてしないはずだ。