そんな届くわけない切実な願いを頭で祈ったところで、抱き着いていた憂ちゃんがわたしから離れたかと思うと、どこかに彼女の視線を向けていることに気が付いた。
「愛美お姉ちゃん、アレ、なんだろう」
アレ? と、わたしも憂ちゃんと同じ視線をたどっていくと、そこには何やら店員と揉めているらしい女子中学生の姿があった。
「あの人、あたしたちと同じ学校の人だよね?」
憂ちゃんの言うとおり、その中学生はわたしたちと同じ、宿木中学校の制服を着ていた。
鞄も学校指定のものだったが、その鞄を店員に取り上げられて、何やら口論をしているようだった。
その様子を見て、「あー、なるほど」と、ある程度、事態を把握したわたしは、憂ちゃんにこの場から離れようと提案しようとしたのだが……。
「愛美お姉ちゃん、ちょっと待っててね」
「……ちょ、ちょっと憂ちゃん」
なんと彼女は、その店員と口論している女子中学生のところまでトコトコと歩き始めたのだ。