この子を喜ばせているのは、わたしじゃなくて、ただ、今のわたしの立ち位置、ポジションが彼女の欲しかったものだっただけなんだ。

 わたしという個人ではなく、『お姉ちゃん』と呼ばれる立場にいるからこそ、この子はわたしと一緒にいても、こうして楽しそうにしていられる。


 やっぱり、そういうことなのだ。


 わたし個人を好きになる人間なんて、この世にはいない。


 そう思ったら、自然と自分の気持ちが冷めていくのが実感できた。


「だからさ、愛美お姉ちゃん、これから毎日私と一緒に遊ぼうね」

「……毎日は少し困るかな?」

 どんな拷問だ。

 しかし、わたしのその言葉を、憂ちゃんは、全然違う解釈をしてしまったようで、

「そうだよね。さすがにパパにお小遣い増やしてもらわないと毎日は無理だよね」

 なんて、見当はずれなことを言ってきた。

 由吉さん。わたしのためにどうか、しばらくこの子にお小遣いをあげないで下さい。

 わたしは、決して届くことはないであろうそんな願いを、頭の中に浮かべるのだった。