憂ちゃんは、とにかく行動派というか、迷いがない。

 洋服店に入ると「絶対に似合うよ!」と豪語して、わたしを試着室に連れて行っては色んな服を着せたり、有名なアイスチェーン店で呪文のような商品名を頼んだり、とにかく自分の欲望に正直な子だった。

 そして、現在滞在しているこの可愛らしい文房具店では、一目見てお気に入りになったのか、兎のキーホルダーをわたしとお揃いで鞄に付けようなんていってくる。

 その行動はまるで、わたしを楽しませようとしているようだった。

 その気持ちは正直、わたしにとっては迷惑なのだけれど……。

 何故かわたしは、楽しそうにする憂ちゃんの笑顔を見てしまうと、彼女を拒絶することができなくなってしまっていた。


 こんな不思議な気持ちは、生まれて初めてかも知れない。


 そんな風に思ってしまったから、わたしは兎のキーホルダーを持ってきた憂ちゃんに、こんなことを聞いてしまったのだろう。

「……憂ちゅんはさ、わたしと一緒にいて、楽しいの?」

 すると、憂ちゃんは一瞬、何を言われたのかわかっていないように首を傾げたけれど、すぐににこっと満面の笑みをして、こう言った。


「うん! すっごく楽しいよ!」


 その言葉に、一切のお世辞がないことくらい、馬鹿なわたしでもすぐにわかった。

「あのね、前も言ったけど、あたし、お姉ちゃんがずっと欲しかったの! 蓮お兄ちゃんはいつも勉強で忙しそうだし、パパとママは仕事や家事で忙しいし。だからね……こうして学校の帰りに家族の人と遊びに行くのって、すっごくすっごく憧れていたんだ!」

 そう言うと、憂ちゃんは急にぎゅーとわたしを抱きしめる。

 驚いたわたしは、ただただ呆然とするだけだったけれど、同時に納得できることもあった。