「おーい、まなみおねえちゃーん! いっしょにかーえろ!」
教室から出た瞬間、廊下に響いたわたしを呼ぶ声。
嘘でしょ……、と頭の中で呟いたが、そんなわたしの心の声が聞こえるはずもなく、わたしを呼んだ張本人、憂ちゃんがぴょんぴょんはねながら、わたしのところへやってきた。
「愛美お姉ちゃん! 一緒に帰ろうっ」
わたしの前まできた憂ちゃんは、先ほどと同じ台詞を言った。
唯一の救いは、今度は叫ばずに内容を伝えてくれたことだ。
「うっ、うん。そう…………だね」
「よーし、それじゃ出発!」
わたしの手を引いて、憂ちゃんが廊下を走る。
慌てるわたしなんて、完全に無視だ。
そして、無邪気な憂ちゃんは、そのままわたしを学校の外まで連れ出した。
この子、もしかして意外に体育会系? なんて言葉が頭に浮かんだところで、憂ちゃんが子供らしい無邪気な笑顔でわたしを見て、こう告げた。
「ねぇねぇ、愛美お姉ちゃん! プリクラ撮りに行こうよ!」
「プリクラ?」
プリクラって……あれだよね?
お金を払って写真をとって、それをシールに加工するやつ。
しかし、何故また急にこの子はそんなことを言い出したのだろう?
「あたし、愛美お姉ちゃんとツーショットのプリクラ欲しいんだー! ねぇーいいでしょー?」
「……うん、別にいいけど」
ここで駄目って言っても、憂ちゃんは多分わたしが「いいよ」って言うまで解放してくれないことは火を見るよりも明らかだった。
昔やった、選択肢があるにも関わらず『いいえ』を押し続けても、一向に場面が展開しないゲームを思い出す。
正直、写真やプリクラみたいに、自分の姿を写させるという行為は、わたしにとってかなりのストレスなのだけれど(小学校の卒業アルバムを貰ったその日にゴミ箱に捨てるほど、わたしは写真が大嫌いなのだ)嫌なことは早めに終わらしておくべきだろう。
「わーい! やった! それじゃ早速、ゲームセンター行こう!」
わたしの気分とは正反対の憂ちゃんは、上機嫌で手を握ってきて、再び走り出した。
やっぱりこの子、体育会系だ。