「じゃ、ここで待っててね」
そう言われて、わたしは二年A組の教室の廊下の前に1人にされる。
教室に入った先生は、「今日からこのクラスの仲間が1人加わります」なんてお決まりの挨拶をする。
男子生徒の声で「男子ですか!? 女子ですか!?」なんて、これまたお決まりの返答をして教室をざわめかせていた。
おいおい、ハードルあげるなよ。と、眉間にしわを寄せたところで、「おーい、遠野」と、わたしの名前を先生が呼んだ。
まぁ、これぐらい、どうってことはない。
大丈夫。自己紹介なら、近江一家の前でもやったじゃないか。
そう自分に言い聞かせて、わたしが教室の扉を開けた瞬間、クラス一同の視線が一斉に集まった。
――うわっ、これって思ったよりもキツいかも…………。
荒くなりそうだった呼吸を整えて、わたしは教卓の前に立ち、緊張している女子生徒という立場を保ちながら、言った。