公立宿木中学校。
それが、わたしが新しく通う、中学校の名前だ。
「それじゃ愛美お姉ちゃん! がんばってねー」
わたしを職員室まで案内してくれた憂ちゃんは、元気いっぱいに手を振って去っていった。
「んー、あの子、君の妹?」
頭をかきながら、セーターを着た男性教員がわたしにそう尋ねてきた。
「……いえ。あの子はわたしが……お世話になっている親戚の家の子、です」
そして、わたしは覚束ない口調で返事をした。
妹だったら一緒にここに残るでしょ? と、余計なことを言いそうになったところで、「ふーん、そう」という、さもどうでも良さそうな返事があって、それで憂ちゃんの話題は終わってしまい、男性教員は自分の自己紹介を始めた。
まぁ、わかっていたことだが、彼はわたしの担任の先生で、クラスは2年A組ということらしい。
クラスの人数は30人。おおよそ男女半々という、わたしには全く興味のない情報が先生の口から次々と発せられた。
そして、「じゃ、HRでみんなの前で挨拶してね」と言われて、わたしは先生の後ろについていって教室へと案内される。
すでにチャイムは鳴っていたので、廊下には生徒がおらず、わたしと先生だけが歩いている。
っていうか、憂ちゃんは遅刻にならなったのだろうか?
チャイムと同時に座っていなければ遅刻扱い、なんて校則の厳しい学校じゃなければいいのだが……。
いやいや、今は憂ちゃんの心配より、自分の心配をしなくては。