「愛美お姉ちゃん。ほら、元気出して。あたしのお気に入りのチョコレートあげるから」
心配そうな顔で、憂ちゃんがわたしに銀色の紙包みを手渡してくれた。
開けてみると、リーフ型になった小さな粒のチョコレートが4、5個入っていた。
どうやら、憂ちゃんはわたしの元気がないと感じたのか、励ましてくれているらしい。
もちろん、わたしは別に着替えを覗かれたことにショックを受けているわけではないので、落ち込んでいるように見えてしまったのなら、それは生憎、素の状態も他人から見ればわたしは陰鬱に見えてしまうということだ。
まぁ、だからと言って反論することもおっくうなので、こうして黙っているわけだけど。
しかし、お菓子で元気になると思っているところが子供らしい発想だ。
別にそれが悪いわけじゃないし、これくらいの年齢の子供なら、むしろ気遣いの出来るいい子なのかもしれない。
「っていうか、パパ本当にありえないよっ! あなたはラブコメの主人公の生まれ変わりかなにかですか! あたしが着替えしているときも部屋にしょっちゅう入ってくるし、その癖どうにかなんないのっ!?」
腕組みをしながら、わたしの座っているソファの隣に一緒に座っている憂ちゃんは、顔を真っ赤にして眉間にしわを寄せていた。
「うう……、本当に面目ない」
そして、リビングの絨毯の上で正座させられている由吉さんは、ひどく落ち込んでいる様子だった。