そんなことを心の中で呟いているうちに、わたしの荷物整理が終わってしまった。

 残りの荷物は宅配で届くはずなのだけど、時間指定などはしていなかったのでまだ届いていないらしい。

 時間を持て余したわたしは、緊張からなのか普段よりも汗を流してしまって、身体中がベトベトになってしまっている。

 気持ちの切り替え、という意味でも、服を着替えようと思い、上の服を脱いで下着姿になった。


 ――そのときだった。


「愛美ちゃん!」

 バンッ、と、勢いよく開かれたドアの向こうに無邪気な笑顔を浮かべている由吉さんと目があった。

 目が、合ってしまった。

「あっ」

 先ほどまでの元気な声とは裏腹に、素っ頓狂な声を上げる由吉さん。

 一方、茫然と立ちすくむ、わたし。

 えっと、こういうときって、どういう反応したらいいのだろうか?

 声にならない声が、わたしの口から出ていこうとする中、由吉さんの表情をみると、由吉さんも自分の失態に気づいたらしく、額から冷や汗をかいている。

「あ、あの……愛美ちゃん……これは……」

 すると、固まったまま動かない2人の空間に、不穏なオーラを纏った人物が、由吉さんの後ろから肩をトントン、と叩く。


「由吉さん、私、何度も注意していますよね……? いくら家族っていっても、みんなの部屋に入るときは必ずノックしてからですよって……」

「あっ、はい、久瑠実さん…………。えっと…………」

「いいから早く出ていって下さいっ!」

 久瑠実さんの一声が部屋で木霊すると、地獄に引きずり落とされるがごとく、目の前の扉がバタンッと閉められ、2人とも姿を消してしまった。

 そして、取り残されたわたしは、どうしたものかと、目をぱちくりさせて固まるだけになってしまったのだった。