そして、久留実さんがいなくなると、久々に1人になる時間ができたような気がした。

 いやいや、とにかく疲れた……。

 慣れないことをするもんじゃないな、やっぱり……。

 しかし、これからも慣れない生活をしないといけないのは間違いない。

 そんな陰鬱な気持ちを抑えながらも、とりあえず、目の前のベッドに飛び込みたい衝動を押さえて、わたしはリュックサックから荷物や着替えを取り出して整理する。

 整理をしながら、今までのことを振り返る。

 うん、近江一家は、至って普通の家族、と表現しても問題ないだろう。

 普通の家族、というのを忘れてしまったわたしだけれど、これが一般的な家庭の様子なのだというのはなんとなくわかる。

 もしかしたら、運の悪いわたしのことだ。

 変な家族に引き取られでもするんじゃないかという心配も頭によぎったけれど、どうやらそういうことはないらしい。


 いやいや、全く。


 本当に、みんな幸せそうな顔しちゃって。


 近江一家は、わたしを新しい家族として迎え入れてくれようとしているみたいだけど、わたしがその期待に応えることは不可能だろう。


 ――だって、わたしは家族なんて嫌いなのだから。