「はい、ここが愛美ちゃんの部屋よ。自由につかってくれていいからね」
久瑠実さんに案内された2階の部屋は、ベッドと学習机、それに本棚が置いてある部屋で、ここがわたしの部屋になるらしい。
よかった。もしかしたら憂ちゃんと共同の部屋を使うように言われるかもしれないことを覚悟していたわたしは、ひとまず安心した。
「あっ、そうそう。これは私からのアドバイスなんだけど、着替え中のときなんかは、これをドアノブにかけておいてね」
そういって久瑠実さんがわたしに渡してきたのは、『着替え中! 絶対に開けるな!』と乱暴な字で書かれた、フック式のメッセージカードだった。
「由吉さん、結構ドジっ子属性っていうのかしら? よく憂ちゃんが着替えしているときに限って部屋のドア開けちゃったりするの。ホント困った人なんだから」
うふふ、と、はにかみながらそんなことを言う久瑠実さんは、どこか楽しそうだった。
「はぁ……、わかりました」
全然わかってなかったけれど、返事をしたわたしに「本当に気をつけてね?」と催促したのち、久瑠実さんは部屋から退出した。