「愛美ちゃん! どうして連絡くれなかったのさ!」
そして、未だに由吉さんの右手に巻かれている包帯を見ると、胸の奥がズキズキと痛んでしまう。
それでも、由吉さんはいつもの朗らかな笑顔を向けて、わたしと接してくれている。
「ほらみんな、ご飯できたわよ。あっ! 愛美ちゃんも帰って来てたのね。ちょうど良かったわ」
それじゃみんなでご飯にしましょう。と、優しい声で久瑠実さんが声を掛ける。家の中からは、美味しそうな匂いが溢れてきていて、空腹感がより一層増したような気がする。
「じゃ、愛美ちゃん」
由吉さんがわたしのところに来て、手を伸ばしてくれる。
その手を掴んで、わたしは近江家の玄関へと足を踏み入れた。
きっとこれから、この家で、たくさんの出来事を経験するだろう。
それはいい思い出だけじゃなく、悲しくなるような思い出もあるかもしれない。
でも、きっとここでなら、弱い自分を、わたし自身が受け入れられるかもしれない。
わたしは、家族なんて嫌いだ。
それでも、少しずつ、向き合っていこう。