「はいはーい、それじゃ、まずは僕からね! 僕は近江由吉。今年で42歳の厄年だよ」
私の後ろで、由吉さんが勝手に自己紹介を始めてしまった。
っていうか、名前はさっき聞いたから由吉さんの自己紹介は必要ない気がする。厄年なのは知らなかったけれど。
そして、由吉さんに続くように、おっとりした笑顔を浮かべる女性が「はい」と手を挙げて、口を開く。
「私は近江久瑠実。由吉さんの妻で、この子たちのお母さんです」
優しそうな微笑みを浮かべながら、ぺこりと頭を下げる久瑠実さん。
「んじゃ、次はやっとあたしの番だね。あたしは近江憂だよ! 今年で中学1年生になりましたー。えっへん」
どうよ、といわんばかりに胸を張る憂ちゃん。その仕種が、逆に子供らしいと思ってしまった。
「それじゃ最後は僕だね。僕は近江蓮(おうみれん)。高校2年生だよ」
よろしくね、と眼鏡の奥から見える瞳からは、久瑠実さんの微笑みと同じ感覚があった。
どうやら、蓮さんが久瑠実さん似で、憂ちゃんが由吉さん似みたいだ。