「……どう? 調子は?」

 わたしが智子に話しかけると、彼女は寂しそうに笑いながら答えてくれた。

「うん、もう大丈夫だよ。身体のほうは……」

 しゅん、とうなだれたまま、智子が告げる。

「ごめんね、愛美ちゃん。私、まだあなたのこと、ちゃんと思い出せていないの……」

「……そっか」

 その言葉を聞いて、安心する自分もいれば、違う感情がわき出てしまいそうな自分もいることに気が付く。

 だから、強がりだと承知の上で、わたしは智子を説き伏せる。

「別に……、無理に思い出さなくていいよ。どうせろくな思い出なんてなかったんだから」

「なにそれ酷いなー。それって私がつまんない人って思われているみたいじゃん」

 ぷくっ、と可愛らしく頬を膨らませる智子。

 だが、すぐにまた、寂しそうな表情をするのが見えて、胸が痛くなる。