6月。
わたしがやって来たのは、精神外科病棟だった。
梅雨なんてどこへ行ったのやら、ここ数日はずっと晴れ間の続く蒸し暑い気候になっていた。
制服のカッターシャツが、汗で気持ち悪くべったりと引っ付いてくるのを我慢しながら、わたしはとある病室を訪ねる。
コンコンッ、と一緒に来てくれた看護士さんが扉をノックすると、「はーい」という、呑気な返事があった。
それを合図に、看護士さんと部屋に入ると白いベッドの上にいた女の子が、こちらを向き、嬉しそうにニコッとほほ笑んだ。
「あっ、愛美ちゃん!」
彼女……、智子はわたしの名前を元気よく叫んだ。
個室だからいいものの、他の入院患者がいたら、はた迷惑な行為にも関わらず、看護士さんはそれを咎めるような発言はしなかった。
「良かったわね、倉敷さん、今日もお友達が来てくれて」
看護士さんがちらっと、後ろにいるわたしを見たので、思わず下を向いてしまう。
「それじゃあ、嬉しいからってあんまりはしゃいじゃ駄目よ」
「はーい」
智子の返事を合図に、看護士さんは部屋から出て行き、二人きりになる。