「たすけて……ください……」


 そんな言葉、今まで、思いついたことともなかったし、たとえ思っても、口に出すことはない言葉だと信じていた。


 わたしは、ずっと独りで誰からも愛されず生きていくんだと思っていた。

 だけど、わたしを認めてくれる人たちが、目の前にいる。

 そして、もう一人、わたしのことを、認めてくれた子がいたのだ。


「わたしの……わたしの『友達』がっ、わたしのせいで傷ついて! もう、どうしたらいいのかわからなくてっ! あの子は! 智子はわたしの『友達』だったせいでっ!」

 喉が張り裂けそうなくらいの泣き声をあげながら、叫ぶ。

「もう……もう嫌だっ! わたしのせいで誰かが傷つくのはっ! わたしなんていなかったら良かったのに! わたしなんてっ!」

 かっこ悪くて、みっともない姿だと、ほんの少し前までの自分が見たら、罵声を浴びせるかもしれない。

 それでも、今だけは、誰かに助けてほしくて。

 この人たちに、自分を助けてほしくて。

「わたしは、どうすればいいんですか……。わたしは智子のために、なにができるんですか……?」

 そんなこと、由吉さんたちに言っても、どうしようもないことのはずだった。

 だけど、由吉さんは、血に染まっていない左手で、わたしの頭を撫でてくれた。

 由吉さんの手は、大きくて、温かい。

 初めてわたしの手を握ってくれたあのときと、同じ感覚がわたしを襲った。

「愛美ちゃん。今までよく、ひとりで頑張ってきたね。でも、もう安心して後のことは僕たちに任せてほしい。だから……」