由吉(ゆきち)さん……」

 そこには、パジャマ姿の由吉さんがいて、久瑠実(くるみ)さんがいた。久瑠実さんの後ろには、少し怯えた様子の(ゆう)ちゃんもいる。

 近江家の人たちが、わたしを見ていた。

 さすがにここで、「おはようございます」なんて、惚けた挨拶をできるはずもなかった。

 それに、蓮さん同様、由吉さんも、今まで見たことがないような形相をしている。

「愛美ちゃん……、馬鹿なことを、考えないで」

 久瑠実さんが、わたしに言った。その瞬間、昨日、久瑠実さんに抱かれたときの温かみが、わたしの中で駆け巡る。


 だけど、わたしはそれを無視する。

 拒絶する。


 こんなもの、本当に、わたしには必要ない。

 受け取る権利もない。


 だから、代わりに包丁を構えて、近江家の人たちに告げる。