「どいてください、蓮さん」

 蓮さんは、わたしの宣言を聞いて、なお、ここから引き下がろうとはしなかった。

「駄目だ。今の君を、この家から出すわけにはいかない」

 蓮さんが一歩、わたしに怯むことなく近づこうとする。


 そうですか。

 それなら仕方がない。


 蓮さんには悪いけれど、包丁でどこまで人を傷つけられるのか、試してもいいかもしれない。

 そう決意し、わたしが蓮さんに、包丁を向けようとしたそのときだった。