「まっ、愛美お姉ちゃん……」

 上ずった声で、憂ちゃんがわたしの名前を呼んだけれど、振り返らなかった。

「愛美ちゃん」

 次に、由吉さんの声が聞こえた。

「今日は……ゆっくり休みなさい。あと、明日は無理に学校に行かなくていいから」

 わたしは、その問いかけに対しても、返事をせずに、部屋に戻った。

 閉じ込められた室内のせいか、自分の身体に染みついた汗の匂いや、ゴミの悪臭が鼻腔を刺激してくる。お風呂に入ったほうがいいかもしれないが、とてもそんな気分にはなれなかった。

 着ていた制服を全て脱いで、シャツとハーフパンツに着替える。

 さすがに、今日は由吉さんが乱入してくることはなかった。

 動きやすい服装になって、わたしはベッドに潜り込む。

 眠れないだろうけれど、明日のために精神も少しだけ落ち着かせよう。


 わたしは生まれて初めて、早く明日が来てほしいと思いながら、瞼を閉じた。