帰りの道はあまり混んでいなかったようで、30分ほど車を走らせて着いた場所は、住宅街の一角にある立派な一軒家だった。
薄々気づいていたけれど、由吉さん、もしかして結構なお金持ち?
まぁ、少なくとも、うちの親にお金を貸せるくらいには余裕があるのは分かっていたので、それほど驚きはしなかったけれど。
「さぁ、ここが今日から愛美ちゃんが住む家だよ」
扉の前で、にこにこしながらそう言う由吉さんは、立ち止まったまま扉を開けようとはせず、わたしに「どうぞ」といわんばかりに手を広げていた。
わたしに扉を開けろ、ということだろうか?
全く知らない家の扉を開けるというのは、違和感というか、ちょっとした気持ち悪さもあったけれど、他人の家の前でずっと突っ立っているほうが不審者に思われかねないので(通報されたら由吉さんがかわいそうだ)、わたしがおそるおそる扉を開けると……。