『……ははっ』

 そんなわたしの心境を切り裂くように、乾いた笑い声が聞こえてきた。

「えっ?」

 頭がパニックでおかしくなりそうだった。

 ほんの少ししか聞こえなかったけれど、その笑い声が智子のものではないことくらい、わたしにはすぐにわかった。

 そして、笑い声の正体も、同時に判断できてしまった。

『どうも、2日ぶりってところかしらね。元気にしてた? まぁ、私たちとしては、元気にしてもらってちゃ色々と困るんだけどさ』

「……霧島」

『こらこら、ちゃんと先輩って呼ばなきゃ駄目でしょ? まだ教育が必要かしら? んーでもごめんね。私たち、もうあなたにあまり興味がなくなっちゃったの?』

「……なに、言ってんの?」

『ふーん、まだ気づかないんだ。こうして私がわざわざ親切ご丁寧に、電話しているのにね。あなたの友達っていう子のスマホでさぁ』

「あんたっ! 智子にっ……!」

『そう焦らないで、愛美(まなみ)ちゃん。いや、違うな、焦ったって無駄っていったほうが正しいかしら?』

 どういう……意味だ?

 わたしの動揺を電話越しでも感じ取ったのか、また『ははっ』という、霧島の笑い声が聞こえてきた。

『えっとね、まぁこっちに来れば全部わかっちゃうんだけど、その前に愛美ちゃんには嬉しい報告だよ』

「……ふざけないでよ。それよりあんた、今どこにいるの? 智子はそこにいるの?」

 そう尋ねるわたしの言葉が聞こえていないのか、霧島は話を続ける。

『もう、私たちはあなたに手出ししないわ。あんなちんけな嫌がらせがどうでも良くなるくらい、楽しませてもらったからね』

「いいからわたしの質問に答えてっ! あんたたちは今どこにいるの!」

『全く、キーキー煩いわねぇ……。まぁ最初に会ったときみたいな、クソ生意気そうなあなたがそんな必死な声を出すってことは、あの子は相当、特別だったみたいね。それじゃあ、愛美ちゃん。今から私が言う場所に行ってみなさい。とっても素敵なものが見れるはずだから』

 霧島は、必死で笑いを堪えているのか、変な息遣いをしながら、駅から少し離れているコンビニの名前を口にした。

『それじゃ、私たちはもう、あんたたちには構わないから、さようなら。短い間だったけど、楽しかったわ』

 本音を言うと、もうちょっと遊びたかったけどね、と霧島は吐き捨てて、電話を切った。


「……くそっ!!」

 わたしは、持っていたスマホに怒りをぶつけるように、投げ捨てた。

 せっかく由吉さんたちが買ってくれたスマホだったが、そんなことを気にしている暇なんて、今のわたしにはこれっぽっちもない。