「それじゃあ逆に聞くんだけど、愛美ちゃんはどうして、僕に手紙を送ってくれたのかな?」

「それは……」

 意外な質問に、わたしは、言葉を詰まらせた。

 だって、わたしはその質問に対して、「別にどんな人でも、わたしみたいなやつを引き取ってくれるなら誰でもよかった」なんて、言えるわけがない。

「まぁ、愛美ちゃんが答えづらいなら、無理に答えなくていいよ。その代わり、僕が愛美ちゃんを迎え入れようと思った理由も教えてあげない」

 そう言って、いたずら好きの子供のような無邪気な笑顔を浮かべた由吉さんは、そのまま話を打ち切ってしまった。

 由吉さんがわたしを引き取った理由には、ほんの少しだけ興味があったのだけれど、こちらのことを詮索されてしまうのが条件だというのなら、由吉さんの言うように、ここはお互いに黙っておくほうが正解なのかもしれない。

 そう結論付けたところで、楽しそうに鼻歌を唄いながら車の運転をしている由吉さんの横顔をちらっとみただけで、それからはずっと窓から流れていく景色を見つめた。

 やっぱり慣れないことをするもんじゃないな、と思いながら、窓ガラスに映る不機嫌そうな自分と目が合って、憂鬱な気分になるのだった。