「智子、わたしはね。あんたが考えてるような、殊勝なやつじゃないんだよ。困っている人を助けたいだとか、そんなことを平気で言える人間じゃないんだよ」
でもね……と、わたしは話を続ける。
「どうしてか、あんただけは、わたしの事情に巻き込みたくないんだよ。わたしの不幸に巻き込まれちゃ駄目なんだ」
だからこそ、わたしは、あんたの友達を辞めるのだ。
「……もう、こんな関係、ここできっぱり止めよう。それで、あんたは見て見ぬ振りをすればいい。そうすれば、元通りになるから……」
わたしの覚悟を、智子に伝える。
「だから、あたしはあんたとは……」
友達なんかじゃない。
そう、はっきり言ってしまえば、それで終わりなんだ。
なのに、言葉が発せられない。
自分でも、驚くくらいに声が震えているのがわかった。
その言葉を智子に伝えてしまえば、本当に、二度と彼女に会えないような気がした。