「愛美ちゃん……ごめんね」

「……えっ?」

 思わず、わたしは呆気に取られて声を漏らしてしまった。


 何故なら、久瑠実さんがゆっくり、わたしの身体を包み込むようにして、ぎゅっと抱きしめたからだ。


「くっ、久瑠実さん……」

 咄嗟のことで、思わず声をあげてしまったわたしに構うことなく、久瑠実さんはそっと耳の近くで呟く。

「愛美ちゃん。悲しいことがあったなら、私にちゃんと言ってね。あまり頼りにならないかもしれないけど、何でも相談してくれていいから」

 久瑠実さんがわたしを抱く力が、ちょっとだけ強くなったような気がしたけど、全然痛くなくて、それどころか、ずっとこうして欲しいとさえ、思ってしまった。

 わたしを押さえつけていた胸の痛みが、和らいでいく。

 だけど、久瑠実さんはわたしを解放して、にこっと微笑んだ。

「はい、これで少しは元気出たかな?」

 わたしは、何も答えずに、ただ下を向くだけだった。

 それでも、久瑠実さんは満足したのか、「ゆっくり休んでね」とだけわたしに伝えて、部屋から去っていった。