「ごめんなさい……ちょっと、食欲がなかったので」

 しかし、失敗をいつまでもひきずっていても仕方がない。ここは、病気ということにしてその場を乗り切ろうとした。

「そうなの……それじゃ、今日はお粥にしましょうかしら」

「いえ、ゆっくり寝たら大丈夫だと思います。気を遣わなくも大丈夫ですから……」

「そう……ちょっとごめんね、愛美ちゃん」

 久瑠実さんは、自分のおでこと、わたしのおでこをぴたっとくっつける。

「……うん、熱はないみたいだけど、気分が優れないなら、ゆっくり寝ておいたほうがいいかもしれないわね。また夕食になったら呼びにくるけれど、無理に下に降りてこなくていいからね」

 笑みを浮かべながら、わたしにそう言ってくれる久瑠実さん。

 良かった。失敗したと思ったが、むしろ事態はいい方向に進んでいるのかもしれない。

 さすがに今日は、あの家族の食卓に肩を並べるのは、精神的に無理だった。