「ああっ、もう!」

 本当に、今日のわたしは、どうかしている。

 こんなんじゃ、わたしという存在が、おかしくなってしまう。

「……って、おかしいのは、元からか」

 そう呟いたけど、わたしの言葉を聞いてくれる人なんて、誰もいなかった。

 とにかくわたしは、智子のことを思い出さないよう躍起になった。

 街を歩いて、あるいてあるいてあるいてあるいて、彷徨い続けた。

 だけど、この街には、智子との思い出が多すぎた。

 どこにいっても、あの子の顔が脳裏に過ぎる。

 そして、もうわたしには行く当てがなくなってしまった。

 だから、わたしはもう戻ることしかできなかった。

 あの人たちがいる、あの家に。