「もう、このお遊びはおしまい。もう、わたしに構わないで」
そういって、教室に戻るつもりだった。
だが、立ち去ろうとするわたしの腕を、智子が掴んだ。
伊丹とは比べ物にならないくらい、弱々しい力で、わたしを引っ張ろうとする。
「……どう、して……」
掠れた声で、智子が問いかける。
「どうして、そんな急に、わたしから離れようとするの? わたし、愛美ちゃんに変なこと、しちゃったかな?」
わたしは、返事をしない。
「きっと、わたしが愛美ちゃんの気に障るようなこと、しちゃったんだよね……。わたしっ……ちゃんと、直すから! 愛美ちゃんが嫌だって思うところ! だから……」
もう、わたしの胸の中の何かが暴れて、限界だった。
乱暴に、わたしは、智子の腕を振りほどく。
「もう、終わりだから……。さよなら、倉敷さん」
そう呟くと、智子の嗚咽のような声が聞こえてきた。
わたしは、逃げるようにその場から立ち去った。