わたしの学校生活を、滅茶苦茶にしてやりたいだって?
冗談はよしてくださいよ、先輩。
わたしは学校生活どころか、生まれたときから、人生なんて滅茶苦茶なんですよ?
だから、あなたたちが介入してきたところで、わたしの生活は変わらないんです。
変わらない、はずなんだ。
そう自分に言い聞かせて、わたしはボロボロの上履きに足を通して教室に向かう。
まだ新品だったはずの上履き。
これも、由吉さんが買ってくれていたものだ。
そう思うと、いくら周りからこれが上履きではなく『ボロボロの得体の知れないナニカ』だと説き伏せられても、わたしは頑としてこの上履きを履き続けるだろう。
「おい、ちょっと待ちなさい。なんだ、その上履きは?」
と、思っていたのだが、そんなわたしの宣言はすぐに撤回されることになった。
教室にたどり着く前に、たまたま廊下ですれ違った先生(名前は知らない)に気付かれて、最終的に学校の予備の上履きを用意してもらう流れになってしまったからだ。
わたしに上履きを渡してきた先生は、特にわたしに事情を聞かなかった。
「しばらくはこれを使いなさい。君、名前と学年とクラスは? あとで担任の先生に私からも事情を説明しておくよ」
一体、何の事情を話すというのだろうか? 特に、わたしのことを聞いたわけでもないのに。
もしかしたら、薄々はわたしの置かれている状況に気付いていたのかもしれないが、深く関わらないようにしたのだろう。
別にわたしは、その先生を責めるつもりもないし、むしろ清々しくもある。
わたしは、最後にその先生に「ありがとうございました」と伝え、教室に向かった。