そして、霧島は、面倒くさそうにわたしを睨みつけながら、こう言った。
「あんたのせいで、あたしたちの友達が警察にお世話になったの」
「警察?」
「文房具店のこと、って言えば、分かってくれるかしら?」
「……ああ、なるほど」
そこで、わたしにはひとつ思い出す出来事があった。
憂ちゃんと買い物に行って、万引き犯と間違われている智子と出会った光景が想起する。
「やっとわかった? あんたが店の人にチクったせいで、あの子たち、学校にバレて警察に連れていかれたんだよ」
「そうだぞ、お前のせいだ」
ピアス耳の霧島の言葉に助長されるように、わたしを罵る化粧女の伊丹。
霧島は、やっとわたしに詳しい事情を話すことにしたのか、聞きたくもないことを淡々と話し出した。
話を整理するとざっとこんな感じだ。
わたしが、万引き犯に仕立て上げるというあいつらを店に報告したことによって、店員さんが警察に報告し、結果、警察に犯行がバレて、捕まってしまったらしい。
これだけ聞けば、犯人も無事捕まって、智子の疑いが完全に晴れたと喜んでいい場面なのだろう。
でも、この2人にとっては、そうではなかった。
どういう情報網を辿ったのかは知らないが、その店に報告をしたというのがわたしだと、彼女たちにばれてしまったらしい。
「……よかったじゃないですか。悪い奴が捕まるのは、当たり前……グッ!!」
ドンッ、と鈍い音が響くと同時に、お腹の部分に激痛が走り、胃液が逆流する感覚が襲ってきた。
思わずわたしは、その場にへたり込んで、お腹を押さえる。それでも、わたしの腕を握る伊丹は手を離してくれなかった。
「あんた、余計なことは言わなくていいの、わかった?」
そして、わたしのお腹を殴ってきた霧島は、鋭い目つきのまま、ニヤリと笑っていた。