「じゃあ、外も暗くなってきたし、今日はもう帰ろうっか」

 智子がそう言ったのと同時に、わたしのポケットに入っていたスマホが震える。確認をしてみると、久留実さんから『愛美ちゃん、どれくらいの時間に帰ってこれそう? 今日の夕飯はグラタンよ(にっこり)』というメッセージを受け取っていた。

 わたしは、それを見て、少しだけ口角をあげて、『もうすぐ帰ります』と返信を打つ。

「ふふっ、なんだか嬉しそうな顔してるよ、愛美ちゃん」

「……別に、いつも通りでしょ?」

「ううん……もっといつもは、怖い顔してる」

「……うるさい」

 わたしの反応を見て、明らかに面白がっている智子を見て、わたしはわざとらしくため息を吐いた。

 やっぱり、友達なんて、面倒くさい。

 でも、こういう人間関係も、悪くないんじゃないかと、そんな風に思ってしまった。

 また、休日に智子から誘いを受けて、適当にこの街を歩くのもいいかもしれない。

 それくらいのことは、付き合ってあげようと、この時のわたしは思っていたのだ。