「……大丈夫だよ、愛美ちゃん」

「……えっ」

 いつの間にか、わたしは智子にそっと肩を置かれていた。

 もうすぐ目の前に、智子の顔があった。

「いつか、愛美ちゃんが自分の話をしてくれる日を待ってる」

 そして、彼女はベンチから立ち上がって、笑顔でこう告げた。

「だって私、愛美ちゃんの友達だから」

 自信たっぷりに、智子はわたしにそう言った。

 ずっと、仮初めの友達として過ごしてきたわたしたちの時間。

 でも、それは本当に嘘の時間だったのか、今のわたしにはもう分からない。

 いや、結論は出ているけれど、口に出したくないだけなのだ。

 やっぱり、わたしはまだ、自分のことが嫌いだから。

 だから、この子のことを……智子を友達だと認める勇気が、わたしにはないのだ。