「おかしいよね。私ね、愛美ちゃんを見たとき、まるで、自分が鏡を見ているようだったの。私がいつも朝、大嫌いな自分が映る姿に、そっくりだった……」
そこで、智子はちょっとだけ声を上ずらせながら、わたしに語り掛ける。
「ごめんね……やっぱり、変だよね。こんなこと言われても、愛美ちゃんは……」
「いや……別に……智子がそう思うんなら、きっと、そうなんだよ」
家族が嫌いな、わたしたち。
智子も、わたしとは違う形で、自分の家族を嫌いになった。
「わたしも、一緒だから……」
わたしは、ぼそぼそと、気弱な声で答える。
「多分、わたしも一緒なんだ。その……家族が、嫌いで……」
「自分が、嫌い、なんだよね?」
……わたしは、コクンと、わずかに首を縦に動かした。
「そっか……わたし、間違ってなかったんだ……」
智子は、視線を上にあげながら呟く。
「でも、わたしは好きだな。愛美ちゃんのこと」
もう、外の景色は茜色から、少しずつ黒い空へと塗り替えられていく。
わたしは、智子の台詞に対して、何も返事をしなかった。