「ねえ、ちょっとだけ、公園でお話しようよ、愛美ちゃん」

「別に、いいけど」

 だから、そう言われたときも、わたしはすぐに返事をしてしまった。

 一応、電源を切っていたスマホを復活させて時刻を確認したけど、まだ夕ご飯までには時間がある。

 相変わらず、通話アプリには未読のメッセージがたっぷりと溜まっていたけれど、見なかったことにして、再びポケットに直す。

 わたしたちは、公民館の前にあった小さな公園に設置されたベンチに腰掛ける。

 まだ空の色は茜色に染まったばかりだったけど、わたしたち以外には誰もいなかった。

 しばらく、わたしも智子も、何も口には出さなかった。

 ただ黙って、空を見上げているような無駄な時間が流れる。

 それでも、わたしは別に悪い気分にならなかった。