『Good Luck』

 四葉のクローバーの写真が表紙の本は、海外の文学らしかった。

 見た目からして、難しそうな本だと感じたけれど、読んでみれば、童話のような、それでいて哲学じみたお話だった。

 簡単に内容をまとめるならば、2人の登場人物が、それぞれ同じ出来事に出くわすのだが、理解や解釈の仕方で、一方が幸せになり、一方は災難に襲われてしまうというお話だ。

 見えている世界が同じでも、感じかたが違えば、結末が変わってしまう……。

 そんなことを、言われているような気分になった。


 ――だけど、わたしはどうなのだろう。

 ――今のわたしが見ている景色は、他人から見たら、幸せな景色なのだろうか。


 そんなことを、考えさせられる物語だった。

 ただ、わたしはいつの間にか、熟読してしまったらしく、智子が声をかけてくれたときには、すでに図書館が閉館時間に差し迫っていたところだった。

「どうする? その本、借りてみる?」

「いや、いいよ。続きは、また来たときにする」

「そっか」

 そう返事をした智子は、とても嬉しそうにしていた。

 わたしはこのとき、智子が嬉しそうにしていた理由は、自分の本に、わたしが夢中になってくれたことだと思っていたけれど、後になって気づいてしまった。