「どう? 愛美ちゃん。面白かった?」
「面白かったよ」
「あはは、あんまり面白くなかったんだね」
わたしのお世辞をあっさりと看破する智子。
まぁ、おそらくはかなり無愛想な表情になっているであろうわたしの発言なんて、信頼にも値しなかったのだろう。
「でも、ありがとね、愛美ちゃん」
「……なんでお礼なんていうの?」
「うーん、なんとなく、かな」
にこっ、とほほ笑みながらわたしを見る智子。その表情は、どこか憂ちゃんに似ていて自然と顔を背けてしまった。
そんなわたしの反応には気づいていないのか、智子は話を続ける。
「愛美ちゃん。もう家に帰る時間かな?」
「いや、まだ帰りたくない」
近江家に戻ったところで、憂ちゃんも蓮さんもまだ帰ってはきていないだろう。それなのに、わたしが戻るわけにはいかない。
というか、由吉さんと久瑠実さんがイチャイチャしているところに一緒だなんて、わたしの神経が持たないよ……。
「じゃ、暇つぶしはもう少し続くってことかな?」
「そうだね……。次も人目がつきにくくて、ゆっくりできるところがいい」
わたしの卑屈な注文に対しても、智子は嫌な顔ひとつせず、「わかった」とだけ言って、次なる目的地へと足を向けた。