さて、どうするか……。
逡巡するが、どちらのほうが一緒に気を遣わなくて済むのかと考えれば、明白であった。
「ごめんなさい、今日は友達と会う約束があるんです」
由吉さんが来なければ、今まさに断ろうとしたところですけどね。と、余計なことは言わずにしておいた。
「……そっかー。友達と約束があるのなら仕方ないね」
由吉さんは、ちょっとだけ悲しそうな表情をしたあとで、いつものように屈託のない笑みを浮かべていた。
でも、その表情が物悲しさを帯びていたことも、わたしには分かってしまった。
「存分に楽しんでおいで! あっ、そうだ。必要ならお小遣い渡すよ。久瑠実さんには内緒にしてくれるのが条件だけどね」
「いえ……、この前貰ったもので十分ですから」
わたしは以前、近江夫婦からお小遣いとして一万円を受け取っていた。まだそのお札はきれいに残っているので大丈夫だ。
とにかく、わたしの予定を聞いた由吉さんは納得してくれたようで、そのままリビングへと戻っていく。