「と、いうわけで! 今日は愛美ちゃんとデートをしようと思ったわけなんです!」

「………………えっ?」

 さっきよりも長いタメをつくって、わたしは素っ頓狂な声を上げた。

 デート? 今デートって言ったかこの人?

「いやー、今日は愛美ちゃんをひとり占めできちゃうなー。あっ、でも最初にあったときも2人きりだったから、久しぶりのデートってことになるのかな?」

 いやいやいやいや。

 勝手に初対面のあの日をデートと表現するのは止めてほしい。

 って、そんなことは問題ではなくて、おかしなことになってる!

 何があって、わたしは由吉さんとデートなどしなくてはいけないのだ。そんなのは絶対にごめんだ。

 しかし、ここでストレートに「嫌です」なんて言えば、下手をしたら泣いてしまうかもしれない。子供みたいにわんわん泣く由吉さんの姿が簡単に想像できてしまうことが空恐ろしい……。

 犬のおまわりさんの気持ちなど知りたくもない。

 何かいい断り方はないか、と考えていると、先ほどまで見ていた文面を思い出し、わたしに選択の余地が残っていることに気付く。