『ごめん。今日は用事があるからまた今度ね』
一応、あの子が傷つかないような文章を作成して、返信をしようと思った。
しかし、わたしはその文章を、智子に送る前にハプニングが発生する。
「愛美ちゃーん! おっはよー!」
そんな大声で、わたしの部屋に入ってきたのは、もうこれは説明も不要なのではないかと思ってしまうのだが、一応念のため、わたしの挨拶とともに紹介しておこう。
「おはようございます。由吉さん」
「うん、おはよう。愛美ちゃん」
由吉さんは朝だというのに、いつもと変わらずのハイテンションぶりだった。
ただ、今回は残念ながら(残念なのか?)わたしが着替え中ということはなかったので、久瑠実さんに怒られるということはないだろう。
でも、部屋に入るときは、やっぱりノックはしてほしい。
単純に、びっくりするんです。
しかし、由吉さんにも悪気がないというのも、短い付き合いだがわかっているわたしは、余計なことは聞かずに、次なる由吉さんの台詞を待った。
そして案の定、由吉さんはわたしに用事があったらしく、にこやかな笑顔のままで、わたしにこう告げた。
「愛美ちゃん! 今日はどこに行きたい?」
「……はい?」
怪訝な表情をしているであろうわたしに構わず、由吉さんは話を続ける。
「いやね、今日、蓮は塾の試験らしくて帰ってくるのは遅いし、憂のやつも友達とカラオケに行くらしくて、僕を相手してくれる人がいないんだよね~」
へー、そうなんですかー、と、微妙な態度をとるわたしだったが、次なる由吉さんの提案は、わたしを震え上がらすには十分なものであった。