「……あのさ……愛美ちゃん」
すると、智子が少し言い淀んだ感じで口を開いた。
いつのまにか、智子は右手に先ほど持っていたお箸ではなく、赤いケースカバーの付いたスマホを持ち出していた。
「わたしたちも、連絡交換とか……してみない?」
言いにくそうに、そう智子は切り出した。
「……なんで?」
わたしは、そんな智子に冷たく質問を返した。
わたしの態度があまりよろしくないのを察してくれたのか、しゅんと項垂れる智子。
だけど、完全には引き下がらなかった。
「その、やっぱりお互い連絡取り合えるようにしておいたほうが友達っぽいかなって」
うん、それは、確かにそうだ。
だが、そこまで、智子との友達関係を徹底する必要があるだろうか?
昼食を一緒に食べてくれるのも助かるし、教室で二人一緒にいるのも一人で寂しくニヒルを気取っていた以前の学校生活よりも、楽ではある。
だけど、さすがにそこまでは……。
「やっぱり、駄目だよね……。お互い干渉するのはなしって、最初に決めたし……」
そう言いながら、智子はスマホをポケットに直そうとした。
その表情は、酷く悲しく、心を打ち砕かれたかのようだった。