やがて閉会の時間が来て、校舎内は生徒だけの世界になった。いっときのお祭り騒ぎを終え、皆満ち足りた笑顔で騒いでいる。あかねがキッチンコーナーの片づけをしているところへ玲人がやって来た。玲人があかねに寄ってくるのは、授業のサポートをして以来、まあまあ経験してきたことなので、表面上は普通に出来た。しかし内心では心臓が50メートルダッシュを始めた。
(平常心、平常心!!! 玲人くんは、打ち解けたクラスメイトに話し掛けてくれてるんだから!!!)
「玲人くん、お疲れさま。残ったやつだけど、紅茶飲む?」
あかねが紅茶のパックを持つと、玲人はにこりと笑った。
「あは。良いの?」
「もう処分しちゃうだけだからね」
そう言ってあかねは手早くカップに紅茶を注いだ。玲人がカップを受け取り、ひと口含む。
「はは、そう言えばずーっと接客してたから、のど渇いてたんだな」
「気づくよね!? 普通」
「だって、ずっと二時間とか歌って喋りっぱなしの生活だったから」
あっ、そうか。『FTF』で活躍していた頃は、ライブで3時間とかぶっ通しで歌い喋りを繰り広げていた。でも、ライブの途中で水は飲んでいたし、やっぱり水分補給は必要だったらしい。
キッチンコーナーのカウンターの下に座り込んで紅茶を飲んでる玲人を見てたら、紅茶を飲み終わった玲人がカップを持ったままふとあかねの顔を見た。
「文化祭、体験できてよかったね。来年は体育祭も体験できるよ」
「ホントだね。楽しみがいっぱいだなあ」
「テストもあるけどね」
「それは前の高校もあったからなあ」
あはは、と笑う玲人の顔が、ふと教室の窓から差し込む夕日の陰から浮き上がった。カウンターにカップを置いた玲人が立ち上がって、窓に背を預けていたあかねの目の前で真剣なまなざしをした。
「高橋さんさ」
「うん?」
「僕とさ……、付き合わない?」