さて、食事も終わりお腹も膨れたミリア。むしろここからが本番。何しろ、あのイベントを見に行かなければならないのだから。しかも、今回はそれを記録するという不思議な媒体さえ手に入れてしまった。
 ありがとう、夢。これぞ、夢。夢の中くらい、夢を見ても罰は当たらないだろうと思う。

 枕の下からタブレットを取り出し、それを鞄に入れる。そしてそのタブレットを入れたバッグを手にしたミリアは、軟禁部屋を後にした。
 向かう先は庭。恐らく、というか絶対にシャイナとカインがいる。カインの氷の心を溶かすのはシャイナの笑顔。そして、その笑顔に釣られてついつい彼女を抱きしめてしまうカイン。

 今、考えただけでも涎もんだ。けして二人の仲を邪魔するわけではない。むしろ応援している。むしろシャイナには幸せになって欲しい。

 ミリアが庭に行くと、そのイベント会場にシャイナの姿もカインの姿も見当たらなかった。仕方ないから、ミリアは木々の陰に身を寄せた。絶対に見たい。絶対に記録したい。その意志だけでそこにいる。

 それから少し経った頃。風に乗って人の声が聞こえてきた。すぐにわかった。この声はシャイナの声。そして。
 ミリアはごくりと生唾を飲み込んだ。木々の隙間から見えるシャイナとカイン。
 なんて素敵なツーショット。とりあえず鞄からタブレットを取り出し、起動。カメラモードにして、何枚か写真を撮ってみる。昔の記憶を掘り起こして操作をしてみたけれど、意外と使えるということがわかった。
 一枚、撮影する。しっかりとその画面の中に映りこむシャイナとカイン。二人は何か難しい顔をして話をしている。

 麗しい二人。

 また、風に乗ってシャイナの声が届いてきた。だけど、内容まではわからない。それに対して、ぼそぼそというカインの声も風に飛ばされてくる。こちらも何を言っているかわからない。
 わからないのだが、これがミリアの中の人が知っている攻略方法と違う、ということだけはわかる。なぜかってそれは、シャイナが喋り過ぎ。ここはコマンド「はなす」は不要。

 だからだろうか。
 ちょっとカインの様子がおかしい。いや、二人の様子がおかしい。ちょっと険悪になってきている。喧嘩腰、という表現が正しいのか。あのカインが声を張り上げている。