何しろ今日はシャイナとミゲルのイベントの日。イベント会場はもちろん図書館。読み終えた本を返すついでに、彼らのイベントをこそっと覗こうと企んでいるミリア。ムフフしかない。
「ミリア。図書館に行くのか?」
と部屋を出たところでアドニスに呼び止められた。意外と神出鬼没なこの男。
「ちょうど、君の部屋へ行こうと思っていたところだったんだ」
「そうなんですね。私は図書館の方へ。こちらの本を読み終えてしまったので、続きを借りようかと思いまして」
ミリアは手にしていた本を、アドニスにも見えるように掲げた。
「そうか。その本は僕も読んだ。だが、その本は完結していない」
「そうなんですか。それは残念です」
夢の中の時間つぶしにちょうどいいと思って借りた本ではあるが、さすがに完結できないままこの夢の世界から立ち去ることになってしまうのも心残りである。本好きな人が思うのは「この本が完結するまでは死ねない」ということのようで、ミリアの中の人の読書家の友人はよくそれを口にしていた。ということは、ミリアの中の人はすでに死んでいるにもかかわらず、その夢の中でも死んでしまうわけで、さらにそれがこの本の完結を見送る前に、となると、死んでも死にきれないし、夢が覚めても覚めきれないということになるわけで。
「ミリア、どうかした?」
そんなどうでもいいことを考えているミリアだが、アドニスにそう声をかけられてふと我に返った。
「あ、いえ。この本の続きが気になっただけです。完結、していないのが残念でして」
アドニスはミリアのその言葉の意味を少し考えた。考えたら何も言えなくなった。
不本意ながら、ミリアはアドニスと図書館へ行くことになった。これからシャイナとミゲルのイベントというにも関わらず。例のタブレットを本の間に挟んで持ち歩いているものの、一度アドニスに気付かれてしまっているから、あまり公には使えないだろう。本に隠して使うしかない。
夢の中の世界なのだから、もう少し夢をみせてくれてもいいのに。
図書館へ足を踏み入れると、ぽつんぽつんと人がいる。もちろん、話し声など聞こえるはずもなく静か。
ミリアはとりあえず手元にある本を返却した。すると、タブレットを隠すものが無くなってしまった事に気付く。でも、仕方ない。新しい本を借りるかどうかは悩むところ。
だって、あと二日。あと二日で処刑されてしまうから、借りた本を返しに来ることができないかもしれない。
「アドニス様」
そっと、ミリアはアドニスの名を呼んだ。他の人の邪魔にはならないように。
「もし、私が今後、こちらに来ることができなくなるようなことが起こったら、私が借りた本を返しにきてくださいますか?」
それにアドニスは目を見開くが、彼女の言いたいことを察したアドニスは黙って頷いた。それを見て安心したミリアは、何冊か本を選び、貸出の手続きをした。あと二日で読めそうな本。続きものはやめておこう。
「ミリア。図書館に行くのか?」
と部屋を出たところでアドニスに呼び止められた。意外と神出鬼没なこの男。
「ちょうど、君の部屋へ行こうと思っていたところだったんだ」
「そうなんですね。私は図書館の方へ。こちらの本を読み終えてしまったので、続きを借りようかと思いまして」
ミリアは手にしていた本を、アドニスにも見えるように掲げた。
「そうか。その本は僕も読んだ。だが、その本は完結していない」
「そうなんですか。それは残念です」
夢の中の時間つぶしにちょうどいいと思って借りた本ではあるが、さすがに完結できないままこの夢の世界から立ち去ることになってしまうのも心残りである。本好きな人が思うのは「この本が完結するまでは死ねない」ということのようで、ミリアの中の人の読書家の友人はよくそれを口にしていた。ということは、ミリアの中の人はすでに死んでいるにもかかわらず、その夢の中でも死んでしまうわけで、さらにそれがこの本の完結を見送る前に、となると、死んでも死にきれないし、夢が覚めても覚めきれないということになるわけで。
「ミリア、どうかした?」
そんなどうでもいいことを考えているミリアだが、アドニスにそう声をかけられてふと我に返った。
「あ、いえ。この本の続きが気になっただけです。完結、していないのが残念でして」
アドニスはミリアのその言葉の意味を少し考えた。考えたら何も言えなくなった。
不本意ながら、ミリアはアドニスと図書館へ行くことになった。これからシャイナとミゲルのイベントというにも関わらず。例のタブレットを本の間に挟んで持ち歩いているものの、一度アドニスに気付かれてしまっているから、あまり公には使えないだろう。本に隠して使うしかない。
夢の中の世界なのだから、もう少し夢をみせてくれてもいいのに。
図書館へ足を踏み入れると、ぽつんぽつんと人がいる。もちろん、話し声など聞こえるはずもなく静か。
ミリアはとりあえず手元にある本を返却した。すると、タブレットを隠すものが無くなってしまった事に気付く。でも、仕方ない。新しい本を借りるかどうかは悩むところ。
だって、あと二日。あと二日で処刑されてしまうから、借りた本を返しに来ることができないかもしれない。
「アドニス様」
そっと、ミリアはアドニスの名を呼んだ。他の人の邪魔にはならないように。
「もし、私が今後、こちらに来ることができなくなるようなことが起こったら、私が借りた本を返しにきてくださいますか?」
それにアドニスは目を見開くが、彼女の言いたいことを察したアドニスは黙って頷いた。それを見て安心したミリアは、何冊か本を選び、貸出の手続きをした。あと二日で読めそうな本。続きものはやめておこう。