なんだか、未来にきてしまったみたいだ。僕はいつもコンビニで立ち読みをしている漫画雑誌の最新号――いや、未来号とでも呼ぶべきだろうか?――を巨大モニターに映して読み漁っているうちに、いつの間にか、……うとうと、眠りに落ちてしまった。

         §

 目を覚ます。今は朝か、昼か? 室内を見回すけれど、時計はおろか、窓すらないのだ。三つもモニターがあるのに、時刻表示が一つもないなんて。
 三つの巨大モニターのうち、左右の二つは変わらず監視カメラの映像を流し続けている。
 野外に設置されているらしい監視カメラの映像区画が明るかったこと、そしてレストランの店内を映している区画に多くの客の姿があったことを複合して、「今は昼時なのだな」と僕は結論付けた。見たところ、監視カメラの映像はどれも日本国内のもののようだし。
 洗面所で顔を洗い終えたところで、やけにタイミング良くインターホンが鳴る。訪ねてきたのは、目の下に大きなクマのある男だ。彼もやはり浮浪者のような格好をしているが、僕を部屋に案内してくれた「ささ、」の男よりは若く、中年太りのお手本のような体形をしている。
「オレミカズキ様、いかがお過ごしですかな。……ほほう、さっそく仕事ですか。感心、感心」
「漫画を読んでいただけですよ。左右のモニターに、監視カメラの映像を流してはいたけれど」
「結構、結構。それで、なにか気付いたことがあれば、そこの電話で教えてくれればよろしい」
「『なにか気付いたこと』って……、『今回の話はサイコーだった』とか、そういうことを?」
 僕は冗談めかして言ったが、男は神妙に頷いた。
「はい。なんでもよろしい。『こういったことを教えるように』と限定してしまうと、せっかくの『気付き』をみすみす逃してしまうことに繋がります。本当になんでも、気付いたことをお教えください」
「……じゃあ、たとえば、さっき読んだこの野球漫画の……どこだっけ、そう、このシーンだけど」
 僕は言いながらタブレット端末を操作して、正面のモニターにとあるページを映し出す。そして「大したことじゃないんですが」と断ってから、説明を始めた。