その他
完
安城和城/著
- 作品番号
- 1657148
- 最終更新
- 2022/01/07
- 総文字数
- 27,367
- ページ数
- 29ページ
- ステータス
- 完結
- いいね数
- 0
「旅人さん、聞いたよ。正直村に行きたいんだって?
あすこはね、村へ行く途中に、深い深い、底なし沼みたいな湿地帯――『大沼』があるからね。
だから朝早く、日の出からひと時の間にそこを通り抜けてしまわないと、村へはたどり着けないよ。
本当はこれ、あまり人には言っちゃいけないことなんだけどね。
なぜって? そりゃあ、正直村の住人はみーんなバカ正直だから。人を疑うことを知らない。
ま、住人みーんなバカ正直だから、誰かがうそをついたり、騙そうとしてくるってことがなくて、耐性がないんだな。だからあまりよそ者を入れたがらない。騙されたくないから。
矛盾するようだが、彼らはよそ者がうそをついて、自分たちを騙そうとしてくるんじゃないかと、そう疑っているんだね。
なぜ日の出からひと時は大沼を通れるか? それは私にも詳しい理屈は分からんが。ありゃあまあ、たぶん日光の角度だろう。日の出からひと時は、沼のしっかりした部分が見える。汚れた川に油を注いだときみたいに、きらきらとな、踏みしめるべき道が光って見える。なんとか馬車も通れる。
それで、……そう、お察しの通り、一つ頼みがあるんだ。
旅人さん、正直村へ行ったら――」
Illustration by yamy
あすこはね、村へ行く途中に、深い深い、底なし沼みたいな湿地帯――『大沼』があるからね。
だから朝早く、日の出からひと時の間にそこを通り抜けてしまわないと、村へはたどり着けないよ。
本当はこれ、あまり人には言っちゃいけないことなんだけどね。
なぜって? そりゃあ、正直村の住人はみーんなバカ正直だから。人を疑うことを知らない。
ま、住人みーんなバカ正直だから、誰かがうそをついたり、騙そうとしてくるってことがなくて、耐性がないんだな。だからあまりよそ者を入れたがらない。騙されたくないから。
矛盾するようだが、彼らはよそ者がうそをついて、自分たちを騙そうとしてくるんじゃないかと、そう疑っているんだね。
なぜ日の出からひと時は大沼を通れるか? それは私にも詳しい理屈は分からんが。ありゃあまあ、たぶん日光の角度だろう。日の出からひと時は、沼のしっかりした部分が見える。汚れた川に油を注いだときみたいに、きらきらとな、踏みしめるべき道が光って見える。なんとか馬車も通れる。
それで、……そう、お察しの通り、一つ頼みがあるんだ。
旅人さん、正直村へ行ったら――」
Illustration by yamy
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