「え……あ……」
 私は、二の句が継げなくなって口をパクパクさせる。乙女ゲーをしているとは、恥ずかしくて絶対に知られたくなかった。
「じ、時間があったときにひととおりいろんなのを試してやったけど、い、今は全然してなくて」
「そうなんだ」
 坂木くんはうなずくと、少しだけ神妙な顔をして自分の顎に手を添えた。数秒黙ったままなので、ドキドキしてくる。もしかして「実は、俺……」と、自分がアラタなのだという告白が始まるのではなかろうか。
 すると、図書室のドアが開いて、おととい本を借りた女子生徒が入ってきた。貸し出しの写真を撮らせてもらった人だ。
「返却お願いします」
 本がカウンターに置かれ、今まで全部坂木くん任せだった私が立ち上がる。
「はい」
 レジみたいにバーコードを読み取り、返却業務を終える。
「返しておきますね。あと、この前はありがとうございました」
 そして、そう言って頭を下げた。彼女のほうも会釈をして図書室を出ていく。すると、坂木くんが自分の唇を指でこすって言った。
「紺野は広報委員じゃないのにちゃんとお礼をして、大人だな」
「だって……ほら、ねぇ」